1892年4月1日付讀賣新聞より:
◎大旋風《おおつむじ》
昨三十一日午后一時頃俄然芝愛宕下通の各所の火の見にて三聲の警鐘を打ち出したるが人人驚きて外面に出れば南に方ッて黑煙捲起り如何にも凄じき有樣なるより近傍の消防夫は喞筒《ポンプ》を曳て駈け付るなど一時は非常に混雜なりしが火元は更に分らず黑煙も須臾にして消失せし由之れ全く火事ならずして三田邊より來りたる大旋風が露月町の裏手なる焦土を捲き揚げたるにて此旋風は芝口一丁目の横町より新橋停車場の派出所に突當り左折して遞信省農商務省の間を過ぎ築地の方に吹去りたり其勢ひ頗る猛烈にて砂石を捲き上げ市街各所の硝子戸を破砕せしものさへありしと