台風11号による山崩れで旅行客1人死亡

AD????/08/29 台風11号による豪雨のため仁多町美女原で山崩れが発生。民宿に宿泊中の2人の女子大生が生き埋めになる。うち1人が死亡

このとき犠牲になったのは浅見祐子さん。浅見光彦の上の妹さんです。

一方,救出された女子大生・正法寺美也子さんは,のちに国鉄芸備線三次駅の跨線橋で不審死することになります。この事件を描いたのが『後鳥羽伝説殺人事件』で,今では浅見光彦シリーズ第1作に数えられる作品ですが,執筆当時はシリーズ化の意図はまったくなかったそうで,浅見光彦も犠牲者の浅見祐子さんの兄として,どちらかというと唐突に登場します。

以前,モデルとなった台風が実在するかどうか,調べてみました。もともと8月下旬は台風の接近・上陸が多い時期なので,候補となりそうな台風はけっこうありますが,11号が接近・上陸したのは1970年だけです。12号とアベック(死語)でやってきて,西にそれて行きました。しかし,このときに中国地方で豪雨があったという記録はありません。しかも1981年ごろの8年前という設定からして古すぎます。

女子大生の夏休みの旅行中に遭った災難ということで,日付を8月に移した可能性もあります。モデルがあるとすれば,別の日付をさがさなければならない……などなど毎年今ごろになると思い出したように調べるのですが,いまだに見つかっていません。

ちなみに,『華の下にて』に登場する台風17号も謎の台風です。

そういえば,『贄門島』などを読んでいると,浅見祐子さんは浅見家では忘れられた存在のように感じられます。お盆のときに思い出してももらえない。

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駒ヶ岳で遭難,11人死亡

AD1913/08/27 台風が逆曲がりコースを描いて仙台湾付近に上陸。この台風による荒天で,中央アルプス駒ヶ岳に登山の途中だった中箕輪尋常高等小学校の校長と生徒ら11人が遭難し死亡

新田次郎の小説『聖職の碑』のモデルとなった事故――といったほうが有名かも知れません。もちろん,σ(^^;)は読んでいませんが(笑)

登山にはなんの興味もないのでこの事故について詳しく調べたことはないですが,台風が右回りではなく,左回りのカープを描いて上陸したという点が珍しいところでしょう。

星落秋風五丈原

AD0234/08/23 諸葛亮五丈原で陣没。54歳

土井晩翠に「星落秋風五丈原」と題する詩があります。

祁山悲秋の風更けて
陣雲暗し五丈原
零露の文は繁くして
草枯れ馬は肥ゆれども
蜀軍の旗光無く
鼓角の音も今しづか

丞相病あつかりき
……

ではじまる400行にも及ぶ長い詩ですが,その昔,三国志フリークだったころ,全部暗記していました(爆)

一方で,「昭和維新の歌」という歌があります。以前は右翼が街宣車で流していましたが,最近はほとんど聞かなくなりました。平成になったこともあるでしょうが(ヘイセイイシンじゃプロレスだし(笑)→平成維震軍),歌詞が難しくてチンプンカンプンだからでしょう。平成のゆとり教育の最大の犠牲者は彼らかも知れません(笑)

ググればいくらでもヒットするので歌詞全部を引用することはしませんが,確かに難しい歌詞です。いきなり汨羅とか巫山とか,中国の故事がぽんぽん出てきます。日本ではなくてなぜか中国です。作詞・作曲の三上卓って中国のシンパだったのでしょうか(爆)

実はこの歌,「星落秋風五丈原」からのパクリで成り立っているといっても過言ではありません。3番,7番,9番が顕著ですが,他にもあるかも知れません。

まず3番。パクリ率40パーセント。後半の

治乱興亡夢に似て
世は一局の碁なりけり

治亂興亡おもほへば
世は一局の棊《き》なりけり

のパクリ。

7番はパクリ率46パーセント。前半の

見よ九天の雲は垂れ
四海の水は雄叫《おたけ》びて

見よ九天の雲は垂れ
四海の水は皆立(ち)て

のパクリです。

このくらいならまだいいほうで,9番に至ってはパクリ率99パーセントです(笑)

功名何ぞ夢の跡
消えざるものはただ誠
人生意気に感じては
成否を誰かあげつらふ

前半が

功名いづれ夢のあと
消えざるものはたゞ誠

のパクリ,後半も

人生意気に感じては
成否をたれかあげつらふ

のパクリです。

よくもまあ恥ずかしげもなくこれだけパクったものです。昔は許されたんですかねえ……。

四面台風

1960年8月23日09時,日本列島は台風に包囲され,「夜聞く,漢軍四面に皆楚歌す」(史記項羽本紀)という状態でした。(天気図参照)

1960082309

さらに,23日15時にはマーカス島の南東海上で台風18号も発生し,14号から18号まで5つの台風が存在するという前代未聞の事態になりました。

饒村曜『台風物語』によると,当時台風観測を行なっていた米軍の飛行機観測隊もお手上げ,

Physically impossible due to Personnel shortage.

という通知を関係各局に出したそうです。

折しもローマ五輪開幕の直前,1964年東京五輪開催も決まっており,オリンピック気分も盛り上がりつつあるときで,5つの台風を五輪に例える新聞記事もありました。

マリアナ東方海上にあった熱帯低気圧がとうとう二十三日台風十八号になった。日本は十四号から十八号まで台風オリンピックさながら五つの台風の輪にがっちりと囲まれたかたちで,こんな現象は二十五年八月以来のこと。(8月24日付読売朝刊)

この台風は今では「五輪台風」とよばれ,マスコミが名づけたことになっていますが,毎日,朝日,読売,なぜか赤旗(気象関係の記事がよく載っていました)などの新聞を見ても“五輪”や“オリンピック”が出てくるのは上の読売の記事だけで,名づけ親についてはわかりません。

24日09時には大陸に上陸した台風15号温帯低気圧に変わったため,台風五輪は本物の五輪の開幕を待たずに早くも閉会式を迎えました。

ハリケーン学部長とハリケーン博士

CNNの次のニュースを翻訳サイトにかけてみたら……。

Hurricane Dean battered the southern coast of Jamaica with heavy rains and surf as its eye passed offshore late Sunday, apparently sparing the Caribbean island the worst of its 145 mph winds.

結果はこうなりました。

ハリケーン学部長は大雨を伴うジャマイカの南海岸を強打しました、そして、目としてのサーフは日曜日遅く沖合に終わりました、明らかに145mphの風の最悪をカリブ海の島に割いて。

なかなか含蓄のある翻訳をしてくれるものです(笑)

“ハリケーン学部長”は聞いたことがありませんが,「少年ジエット」に出てきたハリケーン博士なら知っています。12歳くらいの女の子ばかりを誘拐し……といってもロリコンオヤジというわけではなく,インマエール王国の王女さまをさがすためで,誘拐した少女たちが王女さまではないとわかると,詫び状とともに家に送り返すという律義なところもありました。ちなみに,インマエール王国の王女さま役は,のちに北極探検などで有名になる和泉雅子さんがやっていました。

そのハリケーン博士の伝家の宝刀は,「ハーリーケーーン!!」と叫びながら呼び起こす風速60m/sの風。どんな相手でも吹き倒されます。ただ,実際に60m/sの風が吹くとしてもかなり狭い範囲に限られるようで,まわりにはほとんど被害がありません。

規模からいえばハリケーン博士よりもトルネード博士のほうがふさわしく,今だったらそう名づけられるかもしれませんが,日本でトルネードということばが市民権を得たのはおそらく野茂英雄がMLBで活躍しはじめたころからで,放送当時はトルネードということばはほとんど知られていなかったと思います。

蛇足ながら,「少年ジエット」が放送されていたのは私が生まれるはるか昔です。念のためにつけ加えておきます(笑)

ハリケーンつながりで,ハリケーンパーティーについては↓をどうぞ。

http://blog.notenki.net/2007/07/post_f8ab.html

今宵は七夕

今宵はきれいな七日月夜。

というわけで,今日は旧暦の七月七日,実は本当の七夕です。

七夕は7月7日といっても本来は旧暦の七月七日の行事です。それをそのまま今の暦に当てはめるのには無理があります。

1月遅らせたほうが旧暦に近いということもあり,七夕やお盆は月遅れで行なわれたりもするわけですが,実は月遅れにも欠陥があります。本来,七夕は半月(またはそれに近い月),お盆は満月(またはそれに近い月)であるはずなのに,月遅れにしてもこれは解消されません。

そこで考え出されたのが次のような七夕の定義です。

二十四節気の処暑よりも前で,処暑に最も近い朔(=新月)の時刻を含む日(日本時間)を基準にして,その日から数えて7日目を七夕とする

国立天文台ではこれを「伝統的七夕」といっています。

旧暦を使えばもっと簡単じゃないか……と思う人がいるかもしれませんが,旧暦(=太陰太陽暦)といっても実はひとつではなく,複数の太陰太陽暦が存在するので,ある意味で混乱のもとになります。

ちなみに,今日はその伝統的七夕でもあります。伝統的七夕はなるべく旧暦の七夕に一致するように決めてあるので当然といえば当然ですが。

それにしても,今ごろ七夕といわれてもねえ……。

40.9℃,まだまだ上が……

猛暑の予想が外れたはずの今年の夏,8月にはいるやいきなり猛暑となり,ついに今日,山形が74年間守り続けてきた40.8℃が破られるという事態になりました。

岐阜地方気象台,熊谷地方気象台から“号外”が出ています。↓

http://www.tokyo-jma.go.jp/home/gifu/
http://www.tokyo-jma.go.jp/home/kumagaya/

しかし,40.9℃というのはあくまで気象官署(アメダス含む)の最高気温の記録であって,気象官署以外の値を含めると,1923年8月6日に徳島県の撫養で観測された42.5℃が最高ということになっています。40.9℃なんてまだまだアマいです(笑)

さらに非公式記録まで範囲を広げると,1923年9月2日に東京で記録した46.3℃がσ(^^;)の知る限り国内の最高気温です。もっとも,非公式記録はあくまで非公式なものなので,上には上があるかも知れません。

集中豪雨

AD1953/08/14 この日の夜から15日朝にかけて,東近畿で集中豪雨。湯殿村@京都で428mmを観測。井手町@京都の大正池の堤防が決壊し,680戸が流出。また稲尾村@滋賀では山崩れで41人が死亡。被害は京都・奈良・滋賀・三重・愛知で290人死亡,139人不明,994人負傷,破損住家1777,浸水家屋21517など

局地的な豪雨のことを「集中豪雨」ともよびます。最近はあまり使われなくなっているような気がしますが。このことばがはじめて使われたのは,上の災害を報じる1953年8月15日付朝日新聞大阪本社夕刊の次の記事ということになっています。

十四日夜中から十五日未明にかけて裏日本から南下した寒冷前線は激しい雷と豪雨を伴って京都,滋賀,奈良府県境付近にあたる木津川上流に集中豪雨を降らせ,同地方各地に死傷者,浸水,流失家屋など多大な被害を引き起こし,三重県下でも同様の被害が起っている。

ところが,この新聞の現物を見てみると(実際にはマイクロフィルムですが),この記事の前にでっかく!?

集中豪雨 木津川上流に

という見出しがあるのです。

「集中豪雨」の用例の最初としてこの記事に触れている本などはかなりありますが,この見出しに触れているものは私の知る限りでは平塚和夫『日常の気象事典』(ただし,私の持っている版では“木津川”が“十津川”と誤植されている。西村京太郎のトラベルミステリーじゃあるまいし(笑))と『NHK 気象ハンドブック』だけです。平塚和夫氏やこの記事を最初に見つけた宮澤清治氏はちゃんと原典にあたって調べたのでしょうけれど,他の著者たちは原典を見ていないのでしょう。

ちなみに,『天気図と気象の本』の旧版(1978年)には,元祖集中豪雨は1958年7月1日付の朝日新聞夕刊の次の記事だと書いてありました。

島根県浜田地方に30日夕方6時から1日午前7時までに 200mm の豪雨があり,とくに夜中の3時から朝7時までに 160mm という集中豪雨が降った。

あることばが最初に使われたのはいつかを調べるのは難しいです。まあ,春一番なんていまだにウソが立派に通用していますし。

さて,このようにして使われはじめた「集中豪雨」にはハッキリとした定義があるわけではありません。一般にはどのような意味で使われているのか,お気に入りの3冊の国語辞典で調べてみました。

広辞苑……局地性の豪雨。積乱雲が狭い地域で次々と発生・発達を繰り返すと起る。梅雨前線・秋雨(あきさめ)前線・台風などが近づいたり通過したりすると起りやすい。

大辞林……比較的狭い地域に短時間に降る豪雨。

新明解国語辞典……短い時間続けて比較的狭い地域に強く降る雨。多く,つゆ時から秋の台風期にかけて降る。〔正式の気象学用語ではない〕

名前どおり『新明解国語辞典』がもっとも明解です。私の感覚にも近いです。

広辞苑』と『大辞林』は「豪雨」が何であるかがわからないとわからない書きかたになっているので,それぞれで「豪雨」を調べると,次のようになっています。比較の意味で『新明解国語辞典』も載せました。

広辞苑……一時に多量に降る雨。大雨。

大辞林……激しく多量に降る雨。大雨。

○新明解……短時間のうちに多量に降る雨。

さらに,「大雨」を調べると,

広辞苑……ひどく大量に降る雨。

大辞林……ある時間はげしく,多量に降る雨。

○新明解……激しく降る雨。

調べれば調べるほどわからなくなっていく国語辞典の特徴があらわれてきました(笑) 続けて「小雨」などをひくと,ますますわからなくなります。まあ,これが辞書ひきの楽しさでもあるんですけどね。

見たくもない気象情報(-_-;)

北日本と東日本の高温に関する全般気象情報 第1号
平成19年8月10日17時00分 気象庁発表
(見出し)
 北日本及び東日本では、気温が平年より高い日が続いています。ここ数日
も気温が平年よりかなり高くなり、最高気温が35度以上の猛暑日となると
ころがあるでしょう。
(本文)
 太平洋高気圧が、日本付近を覆い、北日本及び東日本では気温が平年より
高い日が続いています。ここ数日も日本付近が太平洋高気圧に覆われて晴れ
の日が続くため、気温が平年よりかなり高くなり、日最高気温が35度以上
の猛暑日となるところがあるでしょう。
 農作物の管理や熱中症などの健康管理に十分注意してください。

誰か責任とってくれ。