1956年4月25日,台風3号Thelmaが九州に上陸してすぐに消滅しました。
25日付朝日新聞夕刊より:
台風三号 消える
台風三号は二十五日朝九州の南沖まできて消えた。中央気象台の観測では朝六時,台風の名残りとみられる小さい低気圧が宮崎県沖にあるが,陸地では風もなく所によってにわか雨が降っただけ。しかしこのように四月中に台風が日本に近づいたのは,大正六年以来三十九年ぶりという珍しい記録を作った。
なお台風とは別に二十五日朝,朝鮮海峡の低気圧が裏日本ぞいに東進しはじめたので,天気は西日本からくずれ,低気圧に吹き込む南風で蒸し暑くなった。
このため,二十五日午前十一時半「東京地方は今夜から二十六日にかけて南寄りの風が強くなる」との強風注意報が出た。
「気象要覧」(1956年4月)より:
台風第3号は・・・(中略)・・・その後ルソン島に接近するにつれて次第に衰え,ルソン島中部を通過して南支那海に出た22日朝には中心示度は990mb前後に衰弱した。台風は同日の午後から翌朝にかけて北東に転向し,そのころ中心示度は一時深まつたが,石垣島と宮古島の間にあつた24日9時ごろは中心示度は996mbと再び衰えた。25日早朝,台風は大隅半島南部を通過し,同日9時過ぎに宮崎市の南東海上で消滅した。
今の気象庁用語からすれば,上陸というより通過といったほうがいいかもしれません。
気象庁のベストトラックデータは次のようになっています。
56042400 002 9 248 1249 996 56042406 002 9 258 1260 997 56042412 002 9 272 1270 997 56042418 002 9 300 1285 997 56042500 002 2 315 1315 998
ついでに気象庁のサイトにある台風経路図も載せておきます。
このように気象庁では台風のままで大隅半島に“上陸”したように解析しており,これが観測史上つまり1951年以降ではもっとも早い台風の上陸ということになっています。
ところで,JTWCによるこの台風のベストトラックデータは次のようになっています。
WP, 03, 1956042400, , BEST, 0, 248N, 1248E, 70 WP, 03, 1956042406, , BEST, 0, 260N, 1261E, 60 WP, 03, 1956042412, , BEST, 0, 275N, 1278E, 60 WP, 03, 1956042418, , BEST, 0, 289N, 1290E, 45 WP, 03, 1956042500, , BEST, 0, 306N, 1304E, 30
非情にも(?!)大隅半島の突端,佐多岬のわずか手前,北緯30.6度, 東経130.4度で中心付近の最大風速が30ノットに,つまりただの熱帯低気圧に衰えています。