リンゴ台風のない「箱庭」なんて……

内田康夫センセの作品『箱庭』にはプロローグに1991年の台風19号,いわゆるリンゴ台風が描かれています。かなり迫力のある描写です。そして,この台風の暴風で大損害を受けた厳島神社の大鳥居付近に男の変死体が流れ着く――というのが事件のはじまりですが,これについてはリンゴ台風と箱庭 (1991年) | Notenki Express 2014をご覧下さい。

さて,つい先ほどまで金曜プレステージで箱庭が放送されていました。デキもアレでしたが(とにかくヒロインがアレではねえ……),リンゴ台風が無視されていたのはガッカリでした。もっとも,17年前の台風をそのまま取り入れると,TBS月曜ワク“沢村光彦”お得意のメチャクチャな設定になってしまいますが(例えば,『長崎殺人事件』と長崎豪雨 | Notenki Express 2014参照)。

もうひとつ。原作では東尾静江さんの夫は1993年の5年前,つまり1988年の崖崩れで死んだことになっています。これは1988年7月20~21日の豪雨によるものと思われます。

それがドラマでは,10年以上前,鉱山で働いていたときに豪雨による山崩れで死亡したことになっていました。いつの災害によるものかはもちろん不明です。

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台風11号による山崩れで旅行客1人死亡

AD????/08/29 台風11号による豪雨のため仁多町美女原で山崩れが発生。民宿に宿泊中の2人の女子大生が生き埋めになる。うち1人が死亡

このとき犠牲になったのは浅見祐子さん。浅見光彦の上の妹さんです。

一方,救出された女子大生・正法寺美也子さんは,のちに国鉄芸備線三次駅の跨線橋で不審死することになります。この事件を描いたのが『後鳥羽伝説殺人事件』で,今では浅見光彦シリーズ第1作に数えられる作品ですが,執筆当時はシリーズ化の意図はまったくなかったそうで,浅見光彦も犠牲者の浅見祐子さんの兄として,どちらかというと唐突に登場します。

以前,モデルとなった台風が実在するかどうか,調べてみました。もともと8月下旬は台風の接近・上陸が多い時期なので,候補となりそうな台風はけっこうありますが,11号が接近・上陸したのは1970年だけです。12号とアベック(死語)でやってきて,西にそれて行きました。しかし,このときに中国地方で豪雨があったという記録はありません。しかも1981年ごろの8年前という設定からして古すぎます。

女子大生の夏休みの旅行中に遭った災難ということで,日付を8月に移した可能性もあります。モデルがあるとすれば,別の日付をさがさなければならない……などなど毎年今ごろになると思い出したように調べるのですが,いまだに見つかっていません。

ちなみに,『華の下にて』に登場する台風17号も謎の台風です。

そういえば,『贄門島』などを読んでいると,浅見祐子さんは浅見家では忘れられた存在のように感じられます。お盆のときに思い出してももらえない。

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『長崎殺人事件』と長崎豪雨

AD1982/07/23 夕方から深夜にかけて長崎県を中心に記録的な集中豪雨。長与で20時までの1時間に187mm/h(日本における1時間雨量の極値)。死者不明299人,全壊家屋約1500棟,床上浸水約18000棟。重要文化財の眼鏡橋も一部崩壊

この長崎豪雨についてはググれば解説サイトがいくつも見つかりますので,ここでは述べません。

ネタバレになりかねないので詳しくは書きませんが,内田康夫センセの『長崎殺人事件』は長崎豪雨がバックボーンになっています。センセが長崎を取材に訪れたのは大水害からまだ3,4年のころだったそうで,爪痕がまだ生々しく残っていたそうです。

『長崎殺人事件』は1回だけドラマ化されました。2004年4月12日に放送された月曜ミステリー劇場「長崎殺人事件・黙秘する殺人容疑の父…鍵は島原の女!?凶器の指紋が暴く30年前の悲劇」。

長崎豪雨がどのように描かれるのか注目していたのですが,なんと原作の“5年前の水害”をそのまま使ったため,1999年に長崎県で大規模な水害が起こったという,架空の災害のデッチ上げになっていました。

このような例は他にもあります。

2005年12月26日に放送された月曜ミステリー劇場「平家伝説殺人事件…平家の怨念が最後の清流・四万十川を血で染める!?愛に飢えた女の孤独と哀しい運命」。

原作ではプロローグに伊勢湾台風が描かれており,これが伏線になっていくわけです。ところがこのドラマでは肝腎の伊勢湾台風が脇に引っ込み,“沢村光彦”は現地にも行かず,名古屋新聞(?)の見出しとして

巨大台風18号 明日にも上陸か
死者は52人に
伊勢湾台風以来の被害に

のように出てくるだけで,台風18号という架空の台風のデッチ上げになっています。

一方,1999年7月2日に放送された金曜エンタテイメント「平家伝説殺人事件…落人の子孫は,村から出ると不幸に!八百年前の恨みが今,蘇る! 故郷も年齢も同じ二人の男が死亡した。密室に秘められたトリック!! おごれる者は久しからず…落人伝説の地によみがえる死者の怨念!! 2年前のフェリーの同乗者を襲う魔物の影」では(どうでもいいけど,サブタイトル長すぎ),1999年が伊勢湾台風からちょうど40年目ということもあり,“榎木光彦”が現地の慰霊碑などを訪れています。

こう見てくると,“沢村光彦”のいい加減さが目立ちます。

挙げ句の果てに,“沢村光彦”には致命的なドラマがありました。2006年9月25日放送月曜ゴールデン「佐用姫伝説殺人事件……悲劇を招く遊女の幻?叶わぬ愛を貫く女の涙が佐賀・唐津の海に消えてゆく…」。

売春防止法が全面施行されたのは1958年ですから,呼子に遊郭があったのはそれ以前ということになり,成沢久子さんは50歳以上ということになるんですけど……?!

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