キャンプ中の中州に濁流 9人死亡

川の中州でキャンプしていたところを増水によって流された……という事故としては,1999年8月14日に起こった玄倉川での事故がDQNの川流れとして有名です。しかし,いまからちょうど40年前の1966年8月14日,同じような事故が宮崎県の境川で起こりました。

宮崎市立青島中学校では8月12日から14日の予定で,地区ごとの生徒会がそれぞれ校外活動を行なうことになっており,青島七区会は山之口町営青井岳キャンプ場でキャンプを行なう予定を立てていました。メンバーは,生徒女子9人,男子2人,引率の教師2人の総勢13人。

12日にさっそくテントで泊まるつもりでしたが(キャンプに来たのだから当然といえば当然),貸しテントに余裕がなかったため(このあたりからすでに計画に齟齬が生じている?),この日は近くの山之口中学天神分校で1泊することになりました。

13日には貸しテントに余裕ができたのと,どうしてもテントで寝泊まりしたいという生徒の希望もあり,テントを張ることになりますが,なんと生徒が希望するまま川の中州に張ってしまったのでした。このとき,キャンプ場の管理人は悪天候を警告しましたが,教師は2人とも聞き入れませんでした。ちなみに,川の中州はキャンプ場の管理外でした。

このころ,“弱い熱帯低気圧”(死語)が沖縄付近をゆっくりと北上していて,14日未明には台風13号になりました。この影響で,紀伊半島から西の太平洋側と九州では断続的に強い雨が降っており,国鉄日豊線や日南線が不通になるなどの被害が出ていました。宮崎地方気象台では13日10時30分に大雨に関する情報を出しています。

14日6時半ごろ,教師の1人が目を覚ましたときにはテントの足もとまで水が来ていました。危険を察知したこの教師は,ロープを対岸に投げ,そのロープを伝って救援を求めに行きました1

救援隊が駆けつけ,中州の12人にロープを投げましたがうまくいかず,「ロープをつかんでからだに巻け」と叫んでも濁流にかき消されました。当時はレスキュー隊のような高度に訓練された組織はなかったので,救援隊といってもできることは限られていました。

9時30分ごろ,中州に残った12人はいよいよ危なくなり,テントを浮き袋がわりにして川を渡ろうとしましたが,すぐに濁流にもまれ,男子2人と教師1人は岸にたどり着き,女子1人が近くの岩にしがみつき,女子8人が流されました。

結局,岸に泳ぎ着いた男子2人と岩にしがみついた女子1人のみが助かり,流された女子8人と,いったんは岸にたどり着いたものの再び濁流に戻っていった教師1人の合わせて9人は帰らぬ人となりました。

1966年当時から川の中州でのキャンプは危ないという認識はあったようです。しかも大雨による各地の被害が報じられているのにキャンプを強行したというだけでなく,あろうことか中州にテントを張ったということがこの事故の原因であることは明らかであり,100%引率した教師の責任であるといっても過言ではないでしょう。

しかし,業務上過失致死を問われた裁判でなぜか無罪になりました。あまり信用できる資料ではないですが,「全く異例の突発的局地的集中豪雨という偶然的、不可抗力的事実に基因するものである」というのがその理由です。何をもって“異例の突発的局地的集中豪雨という偶然的、不可抗力的事実”とするのかこれだけではわかりませんが,仮に同じ事故がいま起こったとすると,おそらく有罪になります。当時よりも気象情報は簡単に入手できますし,安全に対して責任ある立場の人間が無知を理由に免罪されてはいけません。

それにしても,この事故から33年も経った1999年の同じ日に再び同じような事故が注目されるとは,一部のDQNな人間の所行とはいえ,つくづく人間って何の進歩もない存在だと知らされます。

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  1. 新聞によって救援要請への行きかたが違います。 

DQNの川流れ

前回の日記で名前だけ出てきたあの事故ですが,もう7年も前ですからカビが生えているかも知れません。
でも,次の動画を見ると思い出すかも知れません。

http://www.youtube.com/watch?v=-BaPS5p2CnY

当時のニュースネットから引用します。

   北上する熱帯低気圧の影響で、関東地方は13日夜から14日にかけて激しい雨が降り、各地に大きな被害をもたらした。
  神奈川県山北町では、玄倉(くろくら)川の川岸でキャンプ中だった子ども5人を含む18人が増水で中州に取り残された。
  14日朝から現地の消防組合などが出動したが、救出作業中に鉄砲水で全員が流された。このうち4人は自力で対岸に泳ぎ着くなどしたが、
  同日夜になっても14人が行方不明になっている。県は不明者の捜索、救助のため、自衛隊に災害派遣を要請した。神奈川県では、
  藤野町の道志川でもキャンプ中の男性2人が行方不明になっている。厚木市相模川河川敷でも3人が中州に孤立したが、
  海上自衛隊のヘリに救助された。多摩川の増水で、東京都世田谷区や川崎市幸区では一部住民に避難勧告が出された。
 
   神奈川県警松田署などによると、玄倉川でキャンプをしていたのは、横浜市金沢区のスクラップ会社「富士繁(ふじしげ)」
  の社員やその家族ら。一行は13日に21人で、玄倉発電所の上流約100メートルの川岸でテントを張ってキャンプを始めたが、
  うち3人はその後引き揚げたという。
 
   雨が激しくなった午後8時過ぎ、玄倉発電所を管理する県企業庁の見回り職員が一行に避難を勧めたが、断られたという。
  松田署も避難を呼びかけていた。
 
   14日午前8時過ぎ、発電所職員が、中州になり、孤立している18人を発見。午前9時過ぎ、
  通報を受けた足柄上消防組合の6人が現場に到着したが、増水で中州は覆われていた。川岸からロープを渡して救助を試みたが、
  11時40分ごろ、鉄砲水があり、18人が次々と川に流された。
 
   1歳の男児1人はすぐに救出され、さらに夕方になって、子ども1人を含む3人が対岸にいるのが確認された。
  残る14人の行方はわかっていない。(asahi.com)

  1999081409

ちなみに,
この事故の現地からのレポートでなんたら予報士の資格をもつと思われるレポーターが1時間に38mm程度の雨に対し力を込めて
“記録的な大雨”などといっていましたが,この程度の雨ならいつどこで降ってもおかしくありません。
どういうつもりのレポートだったか知りませんが,あのような増水は日常的に起こることを強調すべきだったでしょう。実際,
地元の人の話によると年に数回は起こっているとのことでした。

ところで,DQNの川流れには先例があります。ちょうど40年前に起こった事故です。


http://notenkiexpress.blog95.fc2.com/blog-entry-334.html

DQNな教師に引率された生徒たちの悲劇です。