1949年10月5日21時,NHKラジオで連続放送劇「えり子と共に」の放送がはじまりました(ちなみに,原作のタイトルは「えり子とともに」)。
放送時間ははじめは毎週水曜日の21時からでしたが,途中で21時15分に変わり,最後は木曜日の20時30分に移動して,1952年4月10日から女湯が空になったという都市伝説をもつ「君の名は」に続きます。
「えり子と共に」は歴史で学んだだけで,どのようなストーリーだったのか,ほとんどわかりません。聞くところによると,「君の名は」のような波瀾万丈の物語ではなく,新しい時代を生きる女性を描いたドラマだったようです。最終回の最後の部分だけ何かの番組で聞いたことがありますが,たしか結婚するところで終わっていました。のちに映画にもなったようですが,ラジオドラマとはちょっとストーリーが違うようです。
「えり子と共に」自体はほとんど忘れ去られているドラマですが,今でも歌い続けられている挿入歌があります。「雪の降る街を」です。
1951年12月26日放送の第114回のリハーサル後に,どうやら時間が余りそうだということで,急遽つくられた曲だそうです(作詞:内村直也=原作者,作曲:中田喜直)。
えり子さんが勤めている会社で本社と工場の対立があり,その宥和を図ろうと,会社の正月の演芸大会に本社と工場の混成メンバーで劇をやる運びになります。劇のタイトルは「花咲く丘」。その劇に登場する歌が「雪の降る街を」で,練習中の場面で花売り娘役の女性社員が歌うのが最初です。そしてこの回の最後に全員の合唱が流れ(このあたりで時間調整をしたのでしょう),えり子さんの年末のあいさつになります。
来年はどういう年になるでしょうか,みなさまの処へも,幸福のビニールが訪れますことをお祈りして……
というわけで,えり子さんがスキーに行ったり,雪国を訪ねたりする場面で流れたわけではなく,特定のモデルもないそうです。
ちなみに,「えり子と共に」の放送期間中,えり子さん役の阿里道子さんと音楽担当の芥川也寸志氏の間のスキャンダルが発覚(これが原因かどうかは知りませんが,途中から音楽担当が中田喜直氏に変更になりました),また阿里道子さんがストーカー被害にあったりしたこともありました。