“破鏡の女”の巻き添え

1954年9月13日16時50分ごろ,日本橋白木屋デパート屋上西南隅の鉄柵を破って若い女“広瀬澄子さん”(27)が飛び降り,宝くじ売りの“お婆さん”(53)の上に落ち,2人とも死亡――という事件が起こりました。(加害者のさんづけも,53歳の“お婆さん”も,当時の新聞の記事のまま)

“澄子さん”は“広瀬充さん”(31)と結婚して子どもを産んだが,夫に女ができて別居,府中の愛子ちゃん殺しの記事を見てここ2,3日沈んでいたという話です。

ここで,“府中の愛子ちゃん殺し”というのは,この年の9月1日,府中市東町の東京工大助手Mさん(33)宅で妻淑子さん(25)が長女愛子ちゃん(生後3か月)を寝かしつけて買い物に出ていたすきに愛子ちゃんの姿が見えなくなり,愛子ちゃんは7日朝9時半ごろ,近くの府中用水路で腐乱死体となって発見された――という事件です。

当初から母親の淑子がなんとなく怪しいと思われていたようですが,10日,容疑否認のまま逮捕,12日になって「用水に投げ込んで殺した」と全面自供しました。

白木屋の飛び降り巻き添えはともかく,“府中の愛子ちゃん殺し”事件は新聞にもデカデカと載っており,“昭和の事件簿”のようなサイトに載っているかと思ったらほとんど載っていないようです。ひょっとして当時としてはよくある事件のひとつだったのかも知れません。