1945年5月24日の夜,米軍による爆撃の最中の数寄屋橋で後宮春樹と氏家真知子が出会い,半年後の11月24日の夜にこの橋の上での再会を約束するというのが,映画君の名はの冒頭のシーンです。ラジオの連続放送劇も同様なんだと思いますが,聞いたことはありません。
しかし,実際には5月24日の夜には空襲はなく,このころ東京に空襲があったのは24日未明と25日夜~26日未明でした。
このうち数寄屋橋付近に空襲があったのは25日夜~26日未明です。
奥住喜重・早乙女勝元『新版東京を爆撃せよ―米軍作戦任務報告書は語る』によると,この作戦命令は第21爆撃機集団野戦命令79号で,発令は25日02時00分(日本時間),爆撃は25日22時38分にはじまりました。
原作者が日にちを間違えたのか,そうでないとすればなんらかの理由で変えたのでしょう。
ちなみに,1991年にNHKの連続テレビ小説で「君の名は」(ヒロイン鈴木京香)が放送されたときは“5月のある日の夜”にボカされていました。
さて,半年後の11月24日,下心いっぱいの春樹は約束どおり数寄屋橋のたもとの交番の前に行きますが,真知子にスッポカされます。それもそのはず,この交番は1944年6月から1946年6月まで閉鎖されていたため行きたくても行けなかったのです。ではなくて,確か実家(佐渡だっけ?)に帰っていたんではなかったのかな。
あきらめのつかない春樹は,未練がましくその1年後の1946年11月24日にその場所に行ってみると,なんとそこに真知子があらわれるという出来過ぎのような展開。春樹がシメシメと思ったのもつかの間,真知子から重大発表が!!
……私,明日……明日……結婚するんです。
ここから春樹の人妻追っかけ人生がはじまります。
どうでもいいですが,この君の名はにしても愛染かつらにしても独身男が人妻を追っかけるという話なのはどうしてなんでしょうねえ? しかも「愛染かつら」の高石かつ枝は子持ちだし……。