チリ沖の巨大地震
2010年2月27日,現地時刻で03時34分ごろ(日本時間では17時34分ごろ),南米のチリ沖でMw8.8の巨大地震が発生しました。
チリ沖で発生した巨大地震では,1960年のチリ地震津波や1877年のイキケ地震など日本沿岸にも津波が押し寄せてきました。イキケ地震については九十九里で津波被害(1877年) | Notenki Express 2014をご覧ください。
今回も日本沿岸に津波が到達すると予想されたことから,気象庁は津波警報・津波注意報を発表しました。
津波警報・注意報
平成22年 2月28日09時33分 気象庁発表
************** 見出し ***************
大津波・津波の津波警報を発表しました
東北地方太平洋沿岸、北海道太平洋沿岸、青森県日本海沿岸、関東地方、
伊豆・小笠原諸島、東海地方、近畿四国太平洋沿岸、岡山県、
有明・八代海、九州地方東部、鹿児島県、沖縄県地方
これらの沿岸では、直ちに安全な場所へ避難してください
なお、これ以外に津波注意報を発表している沿岸があります
************** 本文 ****************
津波警報を発表した沿岸は次のとおりです
<大津波>
青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県
<津波>
北海道太平洋沿岸東部、北海道太平洋沿岸中部、北海道太平洋沿岸西部、
青森県日本海沿岸、福島県、茨城県、千葉県九十九里・外房、
千葉県内房、東京湾内湾、伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾・三浦半島、
静岡県、愛知県外海、伊勢・三河湾、三重県南部、淡路島南部、
和歌山県、岡山県、徳島県、愛媛県宇和海沿岸、高知県、有明・八代海、
大分県瀬戸内海沿岸、大分県豊後水道沿岸、宮崎県、鹿児島県東部、
種子島・屋久島地方、奄美諸島・トカラ列島、鹿児島県西部、
沖縄本島地方、大東島地方、宮古島・八重山地方
これらの沿岸では、直ちに安全な場所へ避難してください
津波注意報を発表した沿岸は次のとおりです
<津波注意>
北海道日本海沿岸南部、オホーツク海沿岸、陸奥湾、大阪府、
兵庫県瀬戸内海沿岸、広島県、香川県、愛媛県瀬戸内海沿岸、
山口県瀬戸内海沿岸、福岡県瀬戸内海沿岸、福岡県日本海沿岸、
長崎県西方、熊本県天草灘沿岸
*************** 解説 ***************
<大津波の津波警報>
高いところで3m程度以上の津波が予想されますので、厳重に警戒してくだ
さい
<津波の津波警報>
高いところで2m程度の津波が予想されますので、警戒してください
<津波注意報>
高いところで0.5m程度の津波が予想されますので、注意してください
ついでですが,当時は大津波警報というものはなく,青森県太平洋沿岸,岩手県,宮城県に発表されたのは大津波警報ではなく大津波の津波警報です。大津波の津波警報をマスコミなどが勝手に大津波警報とよんでいただけです。3.11の際に発表されたのも大津波警報ではなく大津波の津波警報です。
“強行”された東京マラソン
地震の翌日の28日には東京マラソンが予定されていました。
大会を盛り上げるため,次のような白々しいイベントが事前に行なわれたりしていました。
因縁ライバル 瀬古&中山が“和解”の握手
1月27日7時1分配信 スポニチアネックス
日本の男子マラソン界で一時代を築き、強烈なライバル関係にあった瀬古利彦氏(53)と中山竹通氏(50)が26日、都内でトークショーを開催し、ともに笑顔で現役時代はできなかったという“和解”の握手を交わした。
2月28日の東京マラソンを盛り上げるイベントで実現したトークショーの冒頭で、瀬古氏が「オレは中山のことが好きだけど、中山は(オレのことが)嫌いだった」と先手を打つと、中山氏は「ずっと雲の上の存在。それと勝負とは違う」とやり返す場面も。
中山氏は87年12月のソウル五輪代表選考会となった福岡国際で優勝した際、瀬古氏が故障で欠場したことについて「はってでも出てこい!」と発言したとされ、以後、両者は距離を置くようになっていた。
記事中にある1987年の福岡国際マラソンについては「這ってでも出てこい!!」 (1987年) | Notenki Express 2014をご覧ください。
28日朝,気象庁は津波警報または津波注意報を発表するという会見を開きました。ところが,そんなことはお構いなしに東京マラソンのスタートが切られました。
【東京マラソン】速報(1)3万5000人スタート
2010.2.28 09:15
今年で4回目となるアジア最大級の市民マラソン「東京マラソン」(主催・日本陸上競技連盟、東京都、共催・産経新聞社など)は28日、号砲が鳴った。約3万5000人のランナーは都庁前をスタート。都心を駆け抜け、東京ビッグサイトのゴール地点を目指す42・195キロの長いレースが始まった。
スタート地点では、今年も石原慎太郎知事が号砲を鳴らし、午前9時5分に車いすのランナーがスタート。同10分にはフルマラソンと10キロのランナーが都心へと走り出した。冷たい雨が降る悪天候の中、レインコートを着用してレースに臨む市民ランナーの姿が多くみられた。
http://sankei.jp.msn.com/sports/other/100228/oth1002280915001-n1.htm=リンク切れ
同じころ,三陸沿岸では行事を中止して避難に備える動きがありました。
大津波、半世紀前の教訓 三陸、行事中止し避難の備え
2010年2月28日10時6分
1960年のチリ地震津波で大きな被害を受けた宮城県の三陸沿岸では、大津波警報が発令される前から災害対策本部を立ち上げるなどの動きが広がった。
60年に死者41人、負傷者約500人の被害が出た旧志津川町を含む宮城県南三陸町では、午前8時45分に「津波警戒対策本部」を設置。町内で開かれる予定だった「南三陸志津川かきまつり」や防火イベントの中止を決め、防災無線などで町内に通達した。水門を閉鎖したり、避難を勧告するなどの対応をするという。
気仙沼市では大津波警報の発令と同時に、沿岸部の6千世帯1万5千人に避難命令を出し、防災無線と消防の広報車を使って「高台に避難してください」などと周知した。
http://www.asahi.com/national/update/0228/TKY201002280082.html=リンク切れ
東京マラソンの“強行”については当然のことながら疑問の声が上がりました。
防災担当相が東京マラソン開催に疑問呈す
中井洽防災担当相は2日の記者会見で、チリ大地震で津波警報が出た中で東京マラソンが行われたことについて「警報を出しても意味がないということになると、次回の警報が信用されなくなる」と発言、開催の判断に疑問を呈した。
中井防災相は、東京マラソンについて「悠々とやっていた。東京都の判断なのだろう。都の担当者は(当時のマスコミ取材に)『1メートル以上は来ないので決行した』と言っていたが、津波警報は1メートル以上(の可能性があるとの予測)だ」と反論。
「やったことに文句を言っているわけではない」としながらも、開催は警報の信用性に影響を及ぼしかねないとの見方を示した。
その上で、中井防災相は「(国民や自治体などに)もう少しきちっと対応をお願いできるよう(津波予測は)さらに厳密なやり方を考えたらどうだろう」と述べ、一例として大津波警報と津波警報の間の警報レベルを設置するなどの考えを示した。
東京マラソンは2月28日、約3万5000人の市民ランナーらが参加。コースには津波警報が出た東京湾内湾に近い部分も含まれていた。
東京マラソン組織委員会事務局の早崎道晴事務次長は「津波警報は出ていたが、東京湾の予報は1メートル。ゴール地点の東京ビッグサイトは海抜約6メートルあり、安全と判断した。開催中も津波情報は収集し、不測の事態に備えていた」としている。
[2010年3月2日12時41分]
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20100302-601781.html=リンク切れ
この記事によると,開催側には
- 東京湾の予報は1m
- ゴール地点の東京ビッグサイトは海抜約6m
- よって安全
という程度の認識しかなかったんですねぇ。想定外を想定していないどころか,遡上高を考慮に入れてないという……。
当時の津波認識
東京マラソンの担当者もそうでしたが,認識の甘い人は他にもいたようです。
津波、最大波到達前に帰宅 警報発令した釜石と尾鷲
2010年3月2日14時27分
南米チリの大地震で発生した津波で、大津波警報や津波警報が出ていた沿岸部の住民の多くが、第1波の到達を確認したあとで、避難所から帰っていたことが専門家の調査で分かった。津波は第1波の到達後により大きくなっており、避難のあり方や行政からの情報提供をめぐって課題が浮かび上がった。
災害時の住民避難の問題を研究している群馬大学の片田敏孝教授のグループが、大津波警報が出た岩手県釜石市と、津波警報が出た三重県尾鷲市で、避難所に来た住民の動きを調べた。
釜石市では、28日の午後1時半に津波が到達すると予想され、その時間に合わせて住民の数は増えていった。この時刻に最も多い950人が集まった。避難指示が出た地区全体の人口の6%だった。
しかし、午後2時過ぎ、20センチの第1波が観測されると住民は帰宅を始めた。津波は第2波以降大きくなり、午後3時39分の第4波と、午後6時24分の第5波で最大の50センチを観測したが、避難住民の数は午後6時過ぎには240人程度まで減っていた。
尾鷲市では、避難所には午後3時の時点で238人が避難。高さ30センチの第1波が午後3時8分に到達。その後、午後4時までに41人減り、午後5時までにさらに55人が帰宅し、避難者数は142人になった。午後5時5分に最大の60センチの波を観測した。一方、避難住民は午後6時には99人になったという。
片田教授は「テレビなどで津波の到達時間や高さはよく見ているが、第2波や第3波の方が大きいことへの警戒ができていない。津波に対する理解をもっと深める必要がある。日本近海で発生する地震津波では時間はない。揺れたらすぐ逃げるなど、自分で判断することが大切だ」と話している。
http://www.asahi.com/national/update/0302/TKY201003020243.html=リンク切れ
そしてアレの典型はこれ:
サーファー、津波警報無視 全国で1100人確認
2010年3月4日5時5分
南米チリの大地震による津波が心配された2月28日、全国各地の海岸では、海上保安庁や警察などの避難指示にもかかわらず、波乗りを続ける人がいた。海に出ていたサーファーらは海保が確認しただけで全国で約1100人。津波はサーフィンに適した大波とは形や威力が違い、極めて危険だ。無謀な行為に、サーフィン愛好者からも非難の声があがる。
千葉県館山市の平砂浦(へいさうら)海岸。当日の午後、上空を哨戒飛行していた第3管区海上保安本部のヘリコプターが、波乗りをしているサーファー約30人を確認した。拡声機で避難を呼びかけると、何人かは陸に上がったが、約1時間後に戻ったところ、サーファーは約50人に増えていた。拡声機で呼びかけても、反応はほとんどなかったという。
館山市布良では、午後2時16分に20センチの津波の第1波を観測。気象庁は「津波は後の方が大きい可能性がある」として、引き続き高所への避難を呼びかけていた。
ヘリはぎりぎりまで海面に近づき、潜水士2人が飛び込んだ。泳いでサーファーに近づき懸命に説得したが、波の音に打ち消されて声は届きにくかったという。
陸上からは、地元の消防団員162人が消防車で海岸付近を巡回して避難を呼びかけた。千葉県警館山署も、サーファーの多かった平砂浦と同県南房総市の和田浦海岸に警察官を派遣して、午後2時ごろに、いったんほぼ全員を陸に呼び戻した。しかし、警官の姿が見えなくなると再び海に出るサーファーが相次ぎ、暗くなるまでいたちごっこが続いたという。館山市では午後5時52分に80センチの最大波を観測した。
地元のサーフィン愛好家で会社員の宇田川公正さん(45)は「首都圏のサーファーは、時間と金をかけて来たのだから少しでも長く波乗りをしたいと、危険を無視して海に出がちだ」と話した。
年間約6万人のサーファーが訪れる北海道厚真(あつま)町の浜厚真海岸にも、28日早朝から見物人も含めて100人ほどが訪れていた。
苫小牧海上保安署は午前9時30分から正午すぎにかけ、浜辺からと海上からの二手に分かれ、避難を呼びかけた。警報を知らなかった人や、子ども連れの多くは素直に聞き入れたが、「ビッグウエーブに乗ってみたい」と無視するサーファーも少なくなかったという。浜厚真海岸から約2キロの苫小牧東港では午後4時45分に約30センチの津波を観測している。
海上保安庁によると、神奈川県や福島県、愛知県、三重県、和歌山県、徳島県、沖縄県の海岸でも、海に出たサーファーが確認された。呼びかけに応じないケースも目立ったという。海保では「台風の際にも多くのサーファーが浜に集まる傾向がある。指示には必ず従って」と訴える。
日本サーフィン連盟は、「津波はサーフィンに適した波とは質も力も全く異なるもので、非常に危険」と指摘。「海の危険性を学ばないまま、道具だけ買って何となく始めるサーファーが出てきている」として、ルールやマナー順守を呼びかけていく方針だ。
http://www.asahi.com/national/update/0304/TKY201003030535.html=リンク切れ
おまけ
この日(28日)の夜,日本地図入り龍馬伝が放送されました。
また,バンクーバー冬季五輪のカーリング中継では,日本地図に隠れてストーンが見えなかったり……。
兵庫県ではこんなミスも。
津波予想時刻を誤配信 県の防災ネット
チリ大地震で、兵庫県の淡路島南部、瀬戸内海沿岸に津波警報や注意報が出された28日、県の情報ネットワークシステム「ひょうご防災ネット」が、「28日午後4時」だった津波の到着予想時刻を「30日午後1時半」と誤って送信していたことが1日、分かった。約7分後に訂正した。
県は2005年度から、携帯電話のメール機能を使って災害情報を県民に伝える同ネットを整備。最大で34万5千件に配信できる。
県によると、28日午前11時21分、津波注意報が出ていた瀬戸内沿岸の津波到着予想時刻などについて、作成者が書き込みミスをした内容を、そのまま確認せずに送ったという。約13万件に配信されていた。津波警報が出ていた淡路島南部の情報は正確だった。
県災害対策課は「今後は複数チェックを行い、正確な情報発信に努めたい」としている。
(藤原 学)
(2010/03/01 20:16)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0002751270.shtml=リンク切れ
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