楽しい?!高波見物 (2004年)

2004年6月21日の9時半ごろ,台風6号が室戸市付近に上陸,徳島市付近を通過し,13時過ぎに明石市付近に再上陸。死亡2人,行方不明3人,重軽傷19+99人などの被害を出して去っていきました(消防庁まとめ)。

死亡・不明の詳細は次のようになっています。

  • 6月18日……13時10分頃,東京都神津島村鴎穴の食道岩礁において,釣りに来ていた73歳男性が行方不明
  • 6月19日……19時30分頃,静岡県静岡市内の海岸において,21歳と20歳の男性2名が友人とバーベキューをしていたところ,高波にさらわれ行方不明(6月20日4時35分 20歳男性の遺体発見(同時刻,身元確認),5時50分 21歳男性の遺体発見(同時刻,身元確認))
  • 6月20日……13時30分頃,和歌山県美浜町の煙樹ヶ浜において,19歳男性が友人と打ち際で遊んでいたところ,高波にさらわれ行方不明
  • 6月21日……13時30分頃,和歌山県和歌山市加太の大波止赤灯台付近において,26歳男性が友人と波を見物していたところ,高波にさらわれ行方不明

6月18日の件は不明ですが(最後になっていきなり出てきた不明者なので),あとの3件は似たり寄ったりです。要するに,波を見物に行ってその波にさらわれたという,事故というより自爆です。

2年前(2012年)の今ごろ台風4号が北上してきたときに,この2004年の6号について

九州から東海地方にかけて大雨を降らせ,死2,不明3,負傷者116人の被害

というような記事を見かけましたが,死者と不明者は上記の連中です。大雨は関係ありません。

ちなみに,2012年の4号が上陸したのは2年前の今日です。

加太海岸での自爆

6月21日に加太海岸で3人組が波にさらわれたときのようすは,ビデオカメラでバッチリ捉えられていました。テレビのナレーションにもありましたが,あの3人組は防波堤で度胸試しのようなことをしていたようです。3人組の「なぁんだ,たいしたことねえじゃねえか」「こんな波,チョロいチョロい」というような声が聞こえてきそうな波が何発か去ったあと,それまでの波とは比べものにならない高波が押し寄せ,アッという間に3人組をのみ込みました。

近くの漁船のそれこそ命がけの救助によって2人は救助されましたが,1人はそのまま外洋に流されたようです。

まあ,あえていわせてもらえばあんなヤツらを助ける必要はないと思いますが,漁師さんにとっては,自分たちの海があんなヤツらに穢されてたまるか,という思いがあったのかもしれません。

一発大波

海の波は,いろいろな高さの波が混じっています。人間の目に感じる波の高さは,全部の波を高いほうから並べたとき,高いほうから3分の1の平均くらい,といわれています。したがって,人間が感じるよりも高い波が必ず混じっているわけです。

そして,100波に1波はこの1.5倍,1000波に1波はこの2倍の高さになることが統計的に導かれます。これは“一発大波”とよばれます。おおざっぱに,波の周期をかりに6秒とすると,だいたい10分に1波,100分に1波は平均的な波の高さのそれぞれ1.5倍,2倍の波があらわれることになります。

なお,これはあくまで統計上の話なので,一発大波がいつあらわれるかは実際には予測ができません。

水の流れの怖さ

海岸では一発大波だけが怖いわけではなく,もともと水の流れは想像以上に怖いものです。底がしっかりしている流路でも,3m/s 程度の流れがあれば,30cm ほどの深さで歩行は困難になります(体験済み(笑))。3m/s といえばかなりの急流ですが,2m/s 程度の流れでも深さが 50cm もあればやはり歩行が困難になります。砂浜では砂自体が動きますから,なおさらです。ちなみに,子どもの場合は 1m/s 程度の流れがあれば深さ 30cm 程度でも歩行が困難になります。川や海では一瞬たりとも大人が目を離してはいけないということです。

6月19日の事故は,静岡大学モダンダンス部御一行様(総勢60人)がよせばいいのに静岡市高松の海岸でバーベキュー大会(一種の合コン?)を開き,部長の忠告を無視して波打ち際に遊びに行った数人のうちの1人が,尻もちをついた拍子に胸の高さまで水につかって波に引き込まれ,それを助けようとしたもう1人も波にのまれた……という事故のようです。水の怖さをなめてかかった,起こるべくして起こった事故でしょう。

ちなみに,海岸には離岸流(リップカレント)とよばれるハマるとたとえ北島康介やイアン・ソープでも逃げられないかなり恐ろしい流れがありますが,長くなるので,またの機会といたします。

ところで,静岡大学モダンダンス部御一行様は,もちろんちゃんとバーベキューのあとかたづけをして帰ったんでしょうねえ……。

小学生じゃあるまいに

6月19日の事故を受けて,静岡大の天岸祥光学長は次のようなコメントを発表しています。

今後は部活動の顧問教員などを通じ,危険な状況があれば,それに近づかないよう学生に注意を促したい。

なんか小学生を相手にしているみたいです。

海に行くときは,フジツボの恐怖のような作り話を怖がるよりも,海はもともと怖いところだということをしっかりと肝に銘じてほしいです。などとエラそうなことを書いているσ(^^;)はといえば,別の意味で海は怖いことをよく承知しているので,海には近づかないようにしています(笑)

ちなみに,この台風によって近江八幡市にあるラブホテルの屋根が飛び,東海道新幹線の架線を切断,7時間にわたって運休させるという珍事も発生しています。ラブホテルの屋根 新幹線を止める (2004年) | Notenki Express 2014をご覧ください。

※この記事は楽しい?!高波見物 | 能天気Express Hyperほとんどそのままです。確かもともとはココログだったおぼえが。

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