台風中継のヤラセ

民放では,レポーターがよせばいいのに風雨の中にのこのこ出ていって「ものすごい風です」とかレポートする台風中継をいまだに放送しているようですね。アホくさ。

いうまでもなく,あれは一種のヤラセです。100歩譲っても,かつて一世を風靡した「川口探検隊」(今は藤岡探検隊)のようなショーです。いずれにしてもニュースの時間に放送すべきものではありません。

マヌケレポーターのちょっとした不注意で発覚したヤラセ中継については2005年にちょっと話題になったのですが,最近その動画が出回っています。↓

YouTube – 阿部レポーターの台風中継(台風中継後スタスタ歩く)

最後の1~2秒によってそれまでの苦労が水の泡,中継そのものがヤラセだったことがバレてしまいました。

ちなみに,ギョーカイではヤラセではなくヤリというらしいです。

ググってみるとこの動画をこの前の台風4号のときの放送だとカン違いしている人がいるようですが,2005年の14号のときのものです。動画にちゃんと14号と書いてあるのにどうして間違えるんだ?

人間が風の中で立っていることのできる限界は20m/s程度といわれていますが(体験済み(笑)),これはあくまで一様な空気の流れの中での話であって,実際の風にはいわゆる風の息があるために前後左右にゆさぶられることになります。これではバランスをとるのが精一杯で,とてもレポートなどできません。まあ,それでもレポーターはせいぜいマイクしか持っていないので楽でしょうが,真っ先に洞窟にはいらなければならないカメラマンや照明さんはどうなんでしょうねえ……。

結局,何か物体が飛んできたりする危険なども考えると,限界は10m/sってところではないでしょうか。いずれにしても“台風中継”ができるということはレポートできる程度の風しか吹いていないということであり,裏を返せば風は吹いているけれどもさほどでもないということを身をもって知らせているわけです。コワいヘビがしっぽから襲ってきたり,ヘビの攻撃を避けると動かないサソリが襲ってきたりするようなものでしょう。

1965年9月18日未明,台風24号の取材のために東京・江東区方面に出動していたラジオ関東(現・ラジオ日本)の取材車が,記者やアナウンサーら6人を乗せたまま晴海埠頭から海に転落,全員死亡するという事故が起こりました。光る海面を舗装道路と見間違えたのだろうといわれていますが,全員が死亡したため真相はわかりません。ヤラセではない本当の台風中継がいかに危険なものかがわかります。