新沼謙治さんが歌った「津軽恋女」(1987年)の中に
♪津軽には七つの 雪が降るとか
こな雪 つぶ雪 わた雪 ざらめ雪
みず雪 かた雪 春待つ氷雪
という歌詞があります。
この“七つの雪”の出典が太宰治『津軽』であることはよく知られています。その『津軽』では,巻頭に「津軽の雪」としてこの“七つの雪”が並べて書いてあり(ただし順序は“こな雪,つぶ雪,わた雪,みづ雪,かた雪,ざらめ雪,こほり雪”),最後に「東奥年鑑より」とあります。
その『東奥年鑑』(1941年)を見てみると,「積雪ノ種類ノ名稱」として次のように説明されています(ほぼ原文のまま。ちなみに,国会図書館ではこの書物は破損防止のために複写禁止なので,人力複写です(笑))。
こなゆき 濕氣の少い輕い雪で息を吹きかけると粒子が容易に飛散する つぶゆき 粒状の雪(霰を含む)の積つたもの わたゆき 根雪初頭及び最盛期の表層に最も普通に見られる綿状の積雪で餘り硬くないもの みづゆき 水分の多い雪が積つたもの又は日射暖氣の爲積雪が水分を多く含む樣になつたもの かたゆき 積雪が種々の原因の下に硬くなつたもので根雪最盛期以降下層に普通に見られるもの ざらめゆき 雪粒子が再結晶を繰返し粒子が肉眼で認められる程度になつたもの こほりゆき みづゆき,ざらめゆきが氷結して硬くなり氷に近い状態になつたもの
つまり“七つの雪”は降ってくる雪ではないのです。
『東奥年鑑』をよく見ると,続いて「降雪ノ種類ノ名稱」として次の4つが挙げられています。
こなゆき,つぶゆき,わたゆき,みづゆき
おわかりでしょう。ほんとうは津軽には四つの雪しか降らないのです(笑)
〜能天気Express 2006/11/29〜
七つの雪、とっても参考になりました。人力筆写をしている様子を想像すると、なんだか楽しくなります。ありがとうございました。