今日は,冬の天気図の華?!のひとつ,シベリア高気圧の知られざる素顔(?)に迫ります。
シベリア高気圧の素顔
シベリア高気圧とは,『気象科学事典』によると
寒候期にモンゴル北部からシベリア付近で発達する冷たい高気圧。
です。シベリアといってもいささか広うござんすが,中心はバイカル湖付近に現われることが多いです。シベリア高気圧から北東に気圧の尾根が延びて東シベリアに高気圧が現われることがありますが,この東シベリアの高気圧をシベリア高気圧とはふつうよびません。
シベリア高気圧の中心気圧は,1040~1050hPa台は当たり前,1060hPaを超えることも珍しくありません。かつては1080mbを超えたこともあります。最高記録はσ(^^;)が調べた限りでは1947年12月17日の1085mbです。(※hPaとmbを混用していますが,妥協の産物です)
最近は,残念ながら(?!)1060hPa台がせいぜいです。これは天気図の解析法の変化や気候変動などの原因が考えられますが,おそらく前者の影響のほうが大きいでしょう。
シベリア高気圧は冬の天気図の華?!のひとつ……といいながらも,テレビの気象情報番組や新聞に掲載されている天気図は範囲が狭いので,残念ながら北西の隅に一部が顔をのぞかせるだけです。しかし実際にはかなり広大な高気圧で,最盛期にははるかヨーロッパ東部にまで張り出し,ユーラシア大陸のほとんどを勢力下に置くといっても過言ではありません。
とはいっても,一般に高気圧は相対的に,中心の東側では冷たく,西側では暖かくなっているので,ヨーロッパ東部にまで張り出した場合でも,シベリア高気圧がその方面に直接寒気をもたらすわけではありません。
シベリア高気圧の成因
冬季,海陸分布による熱的作用とチベット高原による力学的作用で,東経90°付近の上空(5000m付近)に超長波のリッジ(気圧の尾根)が形成されます。これに対するトラフ(気圧の谷)が大陸東岸から東海上に形成され,リッジからトラフにかけては北からの寒気がはいりやすい場になります。ちなみに,このトラフがどこに形成されるかによって,日本列島への寒気にはいりかたが違ってきます。
一方,シベリア付近の地表では,太陽の南中高度が低くなるために日射が弱くなり,また日照時間も短くなるので,温度が下がります。すると地面に接している空気の気温も下がります。空気は気温が下がると重くなる(密度が大きくなる)ので,下から溜まっていきます。空気が重いので,地表付近の気圧(正確には海面の高度に換算した気圧)は高くなります。
重い空気がある程度蓄積するとまわりに吹き出すはずで,上に述べた場の作用も手伝って南下するのですが,シベリアの南にはチベット高原があってスムーズに流れず,寒気が蓄積されていきます。このようにして形成されるのがシベリア高気圧です。
バイカル湖とシベリア高気圧
σ(^^;)はなぜかバイカル湖が好きで,バイカル湖が描かれていない天気図なんて天気図ではない,と思っていたものです。今のASASに相当する天気図をはじめて見たときはいたく感激しました。
一般に使われている天気図では,共同通信社から各新聞社に配信されている「共同天気図」にはバイカル湖があるのに対し,雑誌「気象」(すでに廃刊)に載っていた天気図にはバイカル湖がありませんでした。どちらも同じところで原版を作成していたはずですが,この違いは……?
現在,気象庁のHPに上げられている天気図には,バイカル湖が3分の2程度描かれています。
テレビの気象情報番組の天気図はさらに範囲が狭いので,バイカル湖が描かれているものを見たことがありません。
さて,上にバイカル湖付近に中心が現われることが多いと書いたシベリア高気圧ですが,実はバイカル湖を中心にすることはほとんどありません。それはバイカル湖がまわりよりも相対的に暖かく,したがってその付近の気圧がまわりよりも低くなっているからです。