12月13日はキリスト教では「聖ルチアの日」です。聖ルシア,聖ルキア,あとで出てくるように聖女リュースともよばれます。伝説によると,304年に若くして殉教したことになっています。
“ルチア”はラテン語で「光(lux)」あるいは「光をもたらす者」の意味です。それもあってか,『フランスことわざ歳時記』(社会思想社)によると,フランスには
聖女リュースの日には,日は蚤のひと跳びだけ長くなる
ということわざがあるそうです。ユリウス暦の時代には聖ルチアの日である12月13日が冬至だったので(というより冬至の日を光をもたらす聖ルチアの日と決めたのでしょう),冬至から日が長くなることをいっている……と解釈するのがふつうのようです。
次の表は,以前パリにおける日の入りの時刻を「ステラナビゲーター6」で計算した結果です。
========== ======== 年月日 日の入り ========== ======== 2003/12/10 16:55:13 2003/12/11 16:55:09 2003/12/12 16:55:08 2003/12/13 16:55:11 2003/12/14 16:55:16 2003/12/15 16:55:24 2003/12/16 16:55:36 2003/12/17 16:55:51 2003/12/18 16:56:08 2003/12/19 16:56:29 2003/12/20 16:56:53 ========== ========
誤差もあるでしょうし,ほかにもいろいろな要因があるので,この値を鵜呑みにはできませんが,だいたい聖ルチアの日ごろから日の入りの時刻が遅くなりはじめているということはできるでしょう。ことわざは言葉どおりの意味でもけっしてウソではないのです。ちなみに,東京でも今ごろから日の入りが目に見えて遅くなりはじめます。
旭川にあるサンタプレゼントパークでは,ルチアは世界の10人のサンタのひとりになっています。
ところで,聖ルチアを守護聖人にしているのがスパゲッティ・ナポリタンで有名な(笑)(これしか知らん(^^;))ナポリで,その民謡(?)に「サンタルチア」があります。音楽には疎いσ(^^;)でさえ「♪スルマーレルッツィカ…」と歌い出しだけは歌えるくらいですから(音程が合っている保証はありません(^^;)),かなり有名な曲なのでしょう。
ここで,サンタルチアというのは「イタリア南部,カンパニア州北西部,ナポリ県のナポリ港南西の地区および街路」(『コンサイス外国地名事典』)で,「この海岸からのナポリ湾とベズビオ山の眺めは第一級」(同)だそうです。
「サンタルチア」には,訳詞が2つばかりあります。歌い出しを比較してみましょう。
まずは,堀内啓三訳詞:
月は高く 海に照り
風も絶え 波もなし
次に,小松清訳詞:
そらにしろき つきのひかり
なみをふく そよかぜよ
一方では「風も絶え」,もう一方では「なみをふく よかぜよ」。いったいどっちがホントなんだ……(笑)
元の詞は“波はおだやかで,(船出にとって都合のよい)順風が吹いている”というような意味のようです。
あとの部分になりますが,元の詞ではこの順風は西風で,この風に乗ってサンタルチアに行こう!! と歌っているので,西にある例えばポンツィアーネ諸島あたりからサンタルチアに向かおうとしているのかもしれません。ところが,小松清訳詞では「かなたしまへ ともよゆかん」とまったく逆になっています。まあ,どうでもいいですけど(笑)