冬将軍に経歴詐称疑惑?!

明日から冬将軍がやってくるとかいって,お天気キャスターたちが冬将軍,冬将軍と連呼しています。

冬将軍って以前はそれほど使用頻度の高いことばではなかったと思いますが,ここ2,3年でやたら耳にする,あるいは目にするようになったような気がします。あくまで気がするだけです。

もし実際にそうだとすると,NHKの天気コーナーの影響かもしれません。今では次のようなTwitterアカウントも登場しています。

そんな冬将軍,由来はいったい何なんでしょう?

一般には次のようにナポレオンを撃退したロシアの厳冬に由来するとされています。冬将軍はなぜ”将軍”? - トクする日本語 - NHK アナウンスルームより一部引用:

この季節になると気象情報で聞きはじめるのが、寒さを擬人化した「冬将軍」ということば。これについて「どうして”将軍”なのか」というお便りをいただきました。これはフランス皇帝ナポレオンに由来しています。1812年にナポレオンは、ロシア遠征で厳しい寒さのため敗退をよぎなくされました。その際、イギリスの新聞が「ナポレオンがgeneral frost(=厳寒将軍)に負けた」と報じたと言われています。これが、日本で「冬将軍」と訳されたのです。ナポレオンに打ち勝つぐらいですから、「大名」や「殿様」よりは「将軍」がしっくりくるかもしれません。

日本語版のWikipediaにもこの説が載っていたりします。

ところが,原典となったといわれる新聞についてなんという新聞の何月何日付の第何面の記事か,調べてもよくわかりません。それに英語版のWikipediaにはgeneral frostの項目がありませんし,私が調べた範囲では次の記載があるだけで,イギリスの新聞が云々という話は載っていません。

Napoleon’s Grande Armée of 610,000 men invaded Russia, heading towards Moscow, in the beginning of summer on 23 June 1812. The Russian army retreated before the French and again burnt their crops and villages, denying the enemy their use. Napoleon’s army was ultimately reduced to 100,000. His army suffered further, even more disastrous losses on the retreat from Moscow started in October.
Russian Winter – Wikipedia, the free encyclopedia

どういうことなんでしょうね?

これについては継続調査中です――といいたいところですが(数年前から(笑)),あんまり興味はないので数年前のままです。

話変わって,それでは冬将軍はいつごろ日本で使われるようになったんでしょう? これについての説明は見たことがありません。

以前国会図書館に行ったついでに新聞を調べた範囲では,初出は意外と新しく,1941年9月16日付の朝日新聞。

冬季作戰の對策(上)/獨逸/計算濟みの「冬將軍」
ナポレオンの轍は踏まず 獨ソ会戰

讀賣新聞にもほぼ同じ時期に使用例があるので,軍部の発表に“冬将軍”が使われていたのかもしれません。

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