この『南総里見八犬伝』あるいは『水滸伝』風のタイトルは,1908年4月10日付の東京日日新聞に使われていた見出しです。
一昨八日夜十時頃より滿都花なる今日この頃奇しくも降り出せる妖雪《ゆき》は終夜《よもすが》ら花魂を驚かして降りしきり明けて昨朝となるも尚降り歇《や》まず春の泡雪と思ひしは違ひて世は白妙の目の行く限り白皚々たるのみか量《かさ》さへ尺と積もりて寒中にも都には容易《たやす》く見られぬ大雪
そして,
されば其が爲めの被害も少からず先づ第一に惜しまるゝは今を盛りの櫻花にて都大路は是よりなる各所の櫻花は枝もたわゝの雪に壓せられて紅褪せ白散じて見るも無殘の姿痛々しく……
とあり,桜の被害もかなり大きかったようです。
東京の積雪は20cmで,今でも4月の最深積雪となっています。
この日の雪は晩雪という点では過去数十年なかった大雪だったらしく,東京日日新聞でも東京朝日新聞でも桜田門外の変を引き合いに出しています。当時はまだ江戸末期の動乱の記憶が残っていたんですね。
4月10日付の時事新報には「氣象臺設置以來三十二年間」にあった4月の降雪日が載っています。
いずれも積雪には至らなかったようです。
なお,この雪の影響で,11日から開催予定だった目黒競馬場での春季恒例競馬は12日からの開催に変更になりました。私の知る限り,4月の競馬の開催中止はこれがはじめてで,これ以降は2010年4月17日の福島競馬まで飛びます。
ちなみに,福島競馬は2013年4月21日にも雪のために中止になっています。(福島競馬がまたまた雪のために中止 | Notenki Express 2014をご覧ください)
※この記事は花魂を驚かして柳楊を壓す 交通機關を奪て勤人を泣す | Notenki Express 2014に少し加筆したものです。