万朶の桜

昨日東京のソメイヨシノの満開の発表があり,

さくらの満開日 気象庁【発表】
2015/03/29
さくらの満開日
(ソメイヨシノ)
気象庁
発表
平年差: -5
昨年差: -1
千代田区北の丸公園
気象庁 付近
靖国神社(ヤスクニジンジャ)

万朶の桜といった表現がピッタリな桜の枝があちこちに見られます。

“万朶”で辞書を検索すると,

(「朶」は垂れさがった枝) 多くの垂れ下がった枝。「―の桜」
~広辞苑

ばん-だ [1] 【万朶】〔「朶」は垂れさがった枝の意〕(花のついた)多くの枝。「―の桜」
~スーパー大辞林

ばんだ_【万〈朶】〔「朶」は垂れ下がった塊カタマリの意〕「―の〔=たくさん咲きそろった〕桜」
~新明解国語辞典

どうやら“万朶の桜”以外に使われることはないようです。

そういえばキシユウローレル世代の馬にオキノバンダというオークス4着馬がいましたが(ホリスキーの母といったほうがとおりがいいかも),馬名の由来はこの“万朶”ではないでしょうね。

“万朶の桜”でググると,「昭和維新の歌」か軍歌「歩兵の本領」ばかりがヒットします。8年前もそうでしたが,今もそうです。早い話が“万朶”だけでなく“万朶の桜”も死語になっているということでしょう。

「昭和維新の歌」では4番に登場します。

昭和維新の春の空
正義に結ぶ丈夫《ますらお》が
胸裡《きょうり》百万兵足りて
散るや万朶の桜花《さくらばな》

この歌は10番までありますが,4番までしか歌われないことが多く(カラオケにも4番までしかないことが多いようです),事実上“散るや万朶の桜花”が最後の決めゼリフになっています。エラそうにゴタクを並べてきた割にはしまらない最後です。もっともこれは便宜的に4番で終わらせるほうが悪いのであって必ずしも作詞者のせいとはいえません。もともとは屈原ではじまり屈原で終わるようにまとまってはいます。作詞者はかなりの中国シンパのようです。

「昭和維新の歌」はかつて右翼が街宣車でしきりに流していましたが,最近はとんと聞かなくなりました。平成になったこともあるでしょうが(ヘイセイイシンじゃプロレスですし→平成維震軍),歌詞が難しくてチンプンカンプンだからでしょう。ここにもゆとり教育の弊害か?!(爆)

ちなみに,この歌には土井晩翠の「星落秋風五丈原」からのパクリが多数あります。9番など全部パクリです。

功名何ぞ夢の跡
消えざるものはただ誠
人生意気に感じては
成否を誰かあげつらふ

「歩兵の本領」では冒頭に出てきます。

万朶の桜か襟の色
花は吉野に嵐吹く
大和男子《やまとおのこ》と生まれなば
散兵線の花と散れ

この「歩兵の本領」は「♪聞け万国の労働者……」でおなじみの「メーデー歌」とメロディーが同じです。中学生のころ,この衝撃の事実?!にビックリしたものです。あとで知ったところでは一高寮歌「アムール川の流血や」のメロディーをそれぞれが拝借したということですが1,今の時代では両対極にあるといってもいいような労働歌と軍歌のメロディーが同じというのはなかなか面白いです。このような歌は他にもあり,あまり有名ではありませんが「富の鎖」「日本海軍」と同じメロディーです。「日本海軍」は当時の保有軍艦の名前がすべて歌詞に読み込まれているという,「ポケモン数え歌」みたいな歌です。

カラオケには「歩兵の本領」はあっても「メーデー歌」はないので,私は「歩兵の本領」の1番だけを歌って2番からは「♪聞け万国の労働者……」を歌います。恐ろしいことに歌詞テロップを見なくても全部歌えます(爆) 小中学生のころに苦労して(?)おぼえた歌はなかなか忘れないものです。今ではおぼえる前に忘れますが(^^;)

そういえば,以前「朝鮮の声放送」を聞いていたときに「歩兵の本領」のメロディーが流れてきてア然としたことがあります。そのときは知らなかったのですが,実は「メーデー歌」のキムチ語版があります。ここで聞けます。

他にも「日本海軍」のメロディーは「朝鮮人民革命軍」という歌に使われています。

8年前,このパクリについて“日本音楽著作権協議会”なる団体が北朝鮮に対し使用料などの請求を検討している(笑)という報道(?!)があったのですが,その後どうなったのでしょうか?

以上,8年前に書いたばんだの桜 | Notenki Express 2014にその後の調査(?)結果を加えて書き直した記事でした。

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  1. さらに「アムール川の流血や」は“日比谷の楽長”永井建子の「小楠公」のメロディーを拝借したらしいです。